ここでは認知症対策について学びます。
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目次
1. 認知症対策とは?
認知症対策は、直接相続に対しての対策というより相続に向かうまでの過程の対策ということが多いですが、相続対策を行う場合、認知症になってしまうと出来ないことがほとんどなので、認知症対策は切っても切れない関係です。
ただし、認知症対策はあくまで目標に対してとる手段です。
提供する側の方で、目標に対する手段であるべき認知症対策が目標にすり替わってしまっているケースも散見します。
認知症対策以外の対策もそうですが、一つ一つの対策は手段であり、目的、目標ではないので、目的、目標に合った認知症対策を行いましょう。
2. 任意後見契約
制度の概要
後見には、法定後見と任意後見があります。
法定後見は、裁判所の手続によって後見人が選ばれ、後見が開始する制度です。
例えば、未成年者は、通常は、親権者である親が未成年者に代わって財産管理や取引を行って未成年者を保護してやるのですが、親がいない場合には、裁判所が後見人を選任して未成年者を保護します(未成年後見)。
また、成人でも、精神障害等によって判断能力が不十分な人については、裁判所が後見人を選任して保護します(成年後見)。
これらに対し、保護を必要とする人が、自分の意思(契約)によって後見人を選任するのが任意後見の制度です。
つまり、法定後見は、判断能力が既に失われたか又は不十分な状態であるため、自分で後見人等を選ぶことが困難な場合に、裁判所が後見人を選ぶ制度で、任意後見は、まだ判断能力がある程度ある人が、自分で後見人を選ぶ制度です。
手続き
任意後見契約は、公正証書で行います。
本人の意思をしっかりと確認し、契約の内容が法律に従ったものにする為、公証人が公正証書を作成します。
必要書類
① 本人について・・・・印鑑登録証明書、戸籍謄本、住民票
② 任意後見受任者について・・印鑑登録証明書、住民票
※発行後3か月以内
費用
① 公証役場の手数料 1契約につき1万1000円、それに証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます。
② 法務局に納める印紙代 2,600円
③ 法務局への登記嘱託料 1,400円
④ 書留郵便料 約540円
⑤ 正本謄本の作成手数料 1枚250円×枚数
任意後見契約と併せ、通常の委任契約をも締結する場合は、その委任契約について、さらに上記1が必要になり、委任契約が有償のときは、1の額が増額される場合があります。
また、受任者が複数の場合(共同してのみ権限を行使できる場合は別として)、受任者の数だけ契約の数が増えることになり、その分だけ費用も増えます。
任意後見人の仕事
任意後見人の仕事は、一つは、「財産の管理」です。
自宅等の不動産や預貯金等の管理、年金の管理、税金や公共料金の支払い等々です。
もう一つは、「介護や生活面の手配」です。
要介護認定の申請等に関する諸手続、介護サービス提供機関との介護サービス提供契約の締結、介護費用の支払い、医療契約の締結、入院の手続、入院費用の支払い、生活費を届けたり送金したりする行為、老人ホームへ入居する場合の体験入居の手配や入居契約を締結する行為等々です。
任意後見人になれる人
成人であれば、任意後見人にすることができます。
身内の者でも、友人でも大丈夫です。
ただし、法律がふさわしくないと定めている事由のある者(破産者、本人と訴訟をした者、不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由のある者(例えば金銭にルーズな人)など)はなることができません。
弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門家がなることもできますし、法人(例えば、社会福祉協議会等の社会福祉法人、リーガルサポートセンター、家庭問題情報センター等々)に後見人がになることもできます。
任意後見の報酬
任意後見人に報酬の有無は、本人と任意後見人になることを引き受けた者との話し合いで決めます。
一般的は、任意後見人を、第三者に依頼した場合には、報酬を支払い、身内の者が引き受けた場合には、無報酬の場合が多いです。
任意後見監督人には、家庭裁判所の判断により、報酬が支払われます。
その報酬額は、家庭裁判所が事案に応じて決定します。
財産の額、当該監督事務の内容、任意後見人の報酬額、その他の諸事情を総合して、無理のない額が決定されています。
決定された報酬は、任意後見人が管理する本人の財産から支出します。
ちなみに、東京家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめやす」は、成年後見人が通常の後見事務を行った場合の報酬は、月額2万円がめやすとされており(管理財産額が1000万円~5000万円までは月額3万円~4万円、5000万円を超えると月額5万円~6万円)、成年後見監督人の報酬のめやすは、管理財産額が5000万円以下では月額1万円~2万円、5000万円を超えると月額2万5000円~3万円とされています。
任意後見の開始
具体的には、任意後見人になることを引き受けた人(「任意後見受任者」といいます。)や親族等が、家庭裁判所に対し、本人の判断能力が衰えて任意後見事務を開始する為、「任意後見監督人」を選任してほしい旨の申立てをします。
家庭裁判所が、任意後見人を監督すべき「任意後見監督人」を選任すると、任意後見受任者は、「任意後見人」として、契約が開始します。
任意後見の解除
任意後見契約を解除することはできますが、下記のとおり、解除する時期により、その要件が異なります。
① 任意後見監督人が選任される前
公証人の認証を受けた書面によっていつでも解除できます。
合意解除の場合、合意解除書に認証を受ければすぐに解除の効力が発生し、当事者の一方からの解除の場合は、解除の意思表示のなされた書面に認証を受け、これを相手方に送付してその旨を通告することが必要です。
② 任意後見監督人が選任された後
任意後見監督人が選任された後は、正当な理由があるときに限り、かつ、家庭裁判所の許可を受けて、解除することができます。
なお、前記のとおり、任意後見人について任務に適しない事由が認められるときは、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができます。
3. 信託
信託とは、言葉の通り委託者が受託者に信じて託すことです。
委託者が、一定の目的のために、信託行為(信託契約・遺言・信託宣言)によって信頼できる受託者に対して財産を移転し、その受託者は、その信託行為に従って、その移転を受けた財産(信託財産)の管理・処分等を行う行為です。
その信託財産によって給付を受ける権利は、受益権を持つ受益者にあります。
信託の登場人物
① 委託者
信託財産のもともとの所有者で、信託を設定するもの
② 受託者
委託者から信頼され信頼された財産の管理・処分を委託されたもの
③ 受益者
信託財産から生じる利益を受ける者
信託のポイント
① 民法上の所有者は受託者に移転
信託を設定することで、民法上、信託財産の所有権(名義)は受託者に移転します。
② 信託財産は委託者や受託者の財産とは分別管理
信託財産は、委託者や受託者の固有財産とは別に分別管理します。
その為、信託開始後、委託者や受託者が破産したとしても、基本的には信託財産に影響を与えません。
③ 税務上の所有者は受益者
信託財産から生じる利益は、実質的には受益者が受ける為、税務上は受益者が所有者とみなします。
④ 受益者の後の受益者の設定
受益者が亡くなった後の受益者を設定することが出来ます。
信託がされたときから、30年を経過後に新たに受益権を取得した受益者が死亡するまで、又は、当該受益権が消滅するまで設定することができます。
⑤ 収益受益権、元本受益権などの設定
賃貸収入を10年目までは誰、10年経過後は誰といった期間を分けて設定、賃貸収入は誰、売却資金は誰といった設定など、期間や得られる収入の種類によっても設定が可能です。
運用上の注意
自由度が高いことがメリットですが、コストが発生するので目的、目標にあった運用の予定はあるのか、管理は出来るのか、処分する予定はあるのかなど、コストに見合う運用が必要になります。
4. 法人化
個人資産を法人に移転し、経営者を親族等にすることで、親族の意思決定で財産の管理、処分を行うことが出来ます。
認知症対策のなかで、最も自由度が高いです。
ただし、移転コストが発生するので目的、目標にあった運用の予定はあるのか、管理は出来るのか、処分する予定はあるのかなど、コストに見合う運用が必要になります。