相続対策に関連する法令改正についてお伝えしています。

 

改正日順に並んでいます。

 

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目次

 

 

2020年4月1日(水) 配偶者短期居住権 

 

2020年4月1日(水) 配偶者居住権 

 

2020年7月10日(金) 法務局における自筆証書遺言の保管制度 

 

 

2020年4月1日(水) 配偶者短期居住権

 

 

配偶者は、相続開始時に被相続人の建物(居住建物)に無償で住んでいた場合には、以下の期間、居住建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を取得します。

 

① 配偶者が居住建物の遺産分割に関与するときは、居住建物の帰属が確定する日までの間(ただし、最低6か月間は保障)

 

② 居住建物が第三者に遺贈された場合や配偶者が相続放棄した場合には居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6か月

 

令和2年3月31日以前の制度

 

配偶者が、相続開始時に被相続人の建物に居住していた場合には、原則として、被相続人と相続人との間で使用貸借契約が成立していたと推認する。

 

※最判平成8年12月17日の判例法理

 

判例法理では、配偶者の保護に欠ける場合がある。

 

第三者に居住建物が遺贈されてしまった場合や被相続人が反対の意思を表示した場合、使用貸借が推認されず、居住が保護されない。

 

制度導入のメリット

 

被相続人の建物に居住していた場合には被相続人の意思にかかわらず保護

 

被相続人が居住建物を遺贈した場合や反対の意思を表示した場合であっても、配偶者の居住を保護することができます。

 

また、常に最低6か月間は配偶者の居住が保護されるというメリットもります。

 

 

2020年4月1日(水) 配偶者居住権

 

 

 

配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利(配偶者居住権)です。

 

① 遺産分割における選択肢の一つとして

 

② 被相続人の遺言等によって

 

配偶者に配偶者居住権を取得させることができます。

 

従来の制度

 

配偶者が居住建物を取得する場合には、他の財産を受け取れなくなってしまう。

 
例 相続人が妻及び子、遺産が自宅(2,000万円)及び預貯金(3,000万円)だった場合

 

妻と子の相続分 = 1 : 1 (妻 2,500万円、子 2,500万円)

 

 

配偶者居住権を利した場合

 

配偶者は自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになる。

 

配偶者居住権の価値評価について(簡易な評価方法)

 
簡易な評価方法の考え方

 

法制審議会民法(相続関係)部会において事務当局が示した考え方(注1)

 

※平成29年3月28日第19回部会会議資料より

 

建物敷地の現在価値 - 負担付所有権(注2) = 配偶者居住権の価値

 

注1 相続人間で、簡易な評価方法を用いて遺産分割を行うことに合意がある場合に使うことを想定したものであるが、不動産鑑定士協会からも一定の合理性があるとの評価を得ている。

 

注2 負担付所有権の価値は、建物の耐用年数、築年数法定利率等を考慮し配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物敷地の価値を算定した上、これを現在価値に引き直して求めることができる(負担消滅時までは所有者は利用できないので、その分の収益可能性を割り引く必要がある。)。

 

評価の具体例

 

同年齢の夫婦が35歳で自宅(木造)を新築。

 

妻が75歳の時に夫が死亡。

 

その時点で土地建物の価値4,200万円(注3)。

 

注3 東京近郊(私鉄で中心部まで約15分、駅徒歩数分)の実例(敷地面積90㎡、木造2階建て、4DK+S、築40年)を参考に作成

 

建物敷地の現在価値4,200万円 - 負担付所有権2,700万円 = 配偶者居住権の価値1,500万円

 

終身の間(平均余命を前提に計算)の配偶者居住権を設定したものとして計算しています(注4)。

 

この場合、配偶者居住権の価値は1,500万円となり、約35%にその価値を圧縮することができます。

 

注4 この事例では、配偶者居住権消滅時の建物の価値が0円となるため、土地の価格4,200万円を法定利率で15年分割り戻したものです。

 

 

 

2020年7月10日(金) 法務局における自筆証書遺言の保管制度

 

 

 

制度の概要

 

自筆証書遺言を作成した方は、法務大臣の指定する法務局に遺言書の保管を申請することができるようになります。

 

※1 作成した本人が遺言書保管所に来て手続きを行う必要があります。

 

遺言者の死亡後、相続人や受遺者らは、全国にある遺言書保管所において、遺言書が保管されているかどうかを調べること(「遺言書保管事実証明書」の交付請求)、遺言書の写しの交付を請求すること(「遺言書情報証明書」の交付請求)ができ、また、遺言書を保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することもできます。

 

 

※2 遺言書保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要となります。

 

※3 遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付がされると、遺言書保管官は、他の相続人等に対し、遺言書を保管している旨を通知します。