ここでは遺言について学びます。

 

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目次

 

 

1. 遺言とは 

 

2. 遺言を作れる人は? 

 

3. 遺言の原則 

 

4. 遺言の撤回方法 

 

5. 遺言の種類 

 

6. 遺言の概要 

 

7. 検認 

 

8. 遺言の種類別メリット、デメリット 

 

9. 遺言執行者 

 

 

1. 遺言とは

 

 

亡くなると同時に身分上あるいは財産上の事柄について、法律上の効力を生じさせようとする意思表示です。

 

 

2. 遺言を作れる人は?

 

 

・遺言を作る時に、満15歳以上であること。

 

・遺言を作る時に、意思能力があること。

 

・言葉が不自由な人、耳が聞こえない人でも作成することができます。

 

 

3. 遺言の原則

 

 

・遺言は必ず書面で法律に従って作成する必要があります。

 

・1通の遺言書に複数人が共同で行うことは出来ません。

 

・いつでも遺言の一部または全部を撤回することができます。

 

 

4. 遺言の撤回方法

 

 

・新たな遺言により前の遺言を撤回する。

 

・新たな遺言により、撤回したい内容に抵触する遺言をする。

 

・遺言と抵触する財産を処分する。

 

・遺言を破棄する(自筆証書)。

 

 

5. 遺言の種類

 

 

遺言は、普通方式と特別方式があります。

 

相続対策で一般的に利用するのは普通方式です。特別方式は、死期が迫っていたり、緊急の場合に行います。

 

普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

 

 

 

6. 遺言の概要

 

 

普通方式の自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の概要は下表となります。

 

 

自筆証書遺言

 

 

財産目録等以外の全文、氏名、日付を自書し、押印して作成します。

 

財産目録には、パソコンの目録や通帳のコピー、登記簿謄本自体を利用することが出来、その際には利用したもの全てに、署名、押印が必要になります。

 

メリット

 

・ 証人無し

 

・ 遺言の内容を秘密にできる

 

・ 費用がかからない

 

・ スピードが速い

 

デメリット

 

・ 要件不備の可能性

 

・ 紛失や偽造、変造、隠匿、災害による消失の危険性

 

・ 家庭裁判所の検認

 

・ 有効性のトラブルの可能性

 

公正証書遺言

 

 

公証役場にて、本人が遺言の内容を口述し、それを公証人が記述し、作成します。

 

原本、公証役場で保管され、正本と謄本を本人が保管します。

 

公証役場で、作成する際には証人が、2名必要です。

 

証人

 

以下の方は証人になることが出来ません。

 

① 未成年者

 

② 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

 

③ 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

 

メリット

 

・ 法的に確実な遺言

 

・ 原本は公証役場に保管される為、偽造、変造、隠匿、紛失、災害による消失がない。

 

・ 登記関連の手続きが容易

 

デメリット

 

・ 公証人と打ち合わせが必要

 

・ 費用がかかる

 

・ 証人2人以上の立会いが必要

 

・ 証人を通じて遺言の作成内容が第三者に漏れる恐れがある。

 

作成時に必要なもの

 

① 遺言者本人の印鑑証明書(発行から3か月以内のもの) 1通

 

② 実印

 

③ 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本(改正原戸籍謄本等)

 

④ 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票

 

➄ 財産に不動産が含まれる場合

 

・ 土地、建物の登記簿謄本

 

・ 土地、家屋の納税通知書又は固定資産税評価証明書

 

⑥ 財産に預貯金が含まれる場合

 

・ 銀行(証券会社)と支店名

 

・ 現在の残高

 

 

遺言執行者を指定する場合

 

氏名、住所、生年月日を記入します。

 

手数料

 

基本手数料(財産をもらう人が1人につき)

 

 

その他

 

 

作成の流れ

 

① 書類を用意し、公証人と打ち合わせ

 

② 遺言の下書き原稿の内容確認後、作成日時の決定

 

③ 公正証書遺言作成完了

 

秘密証書遺言

 

 

遺言に署名、押印した後、封筒に入れ、封印し、公証役場にて手続きを行います。

 

内容はPCで作成が可能です。

 

署名は自書、押印 遺言と封筒の封印は同じ印鑑で行います。

 

作成の際は、証人2名が必要です。

 

作成後の秘密証書遺言は、遺言者(被相続人)が保管します。

 

相続発生時には、検認が必要です。

 

証人

 

以下の方は証人になることが出来ません。

 

① 未成年者

 

② 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

 

③ 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

 

費用

 

11,000円

 

メリット

 

・ 遺言の内容を秘密にできる

 

・ パソコン可

 

・ 改ざんの心配がない

 

・ 遺言の存在の有無の確認が出来る

 

デメリット

 

・ 要件不備の可能性

 

・ 紛失や隠匿、災害による消失の危険性

 

・ 家庭裁判所の検認

 

・ 有効性のトラブルの可能性

 

・ 費用がかかる

 

・ 証人2人以上の立会いが必要

 

作成の流れ

 

①秘密証書遺言を作成する

 

②公証役場の作成日程の予約

 

③作成

 

作成時に必要なもの

 

・遺言書

 

・遺言書に押印した印鑑

 

・身分証

 

・費用11,000円

 

 

7. 検認

 

 

検認は遺言書の偽造や変造を防ぎ、仮に原本を紛失しても写しは確実に保存しておくための手続きです。

 

遺言書の内容が有効か無効かを判断するものではありません。

 

遺言者(遺言書を書いた人=亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で申立てをします。

 

見つかった遺言書(自筆証書遺言、秘密証書遺言)に封印がある場合は、勝手に開封してはいけません。法律では5万円以下の過料が科されることになっています。

 

該当する遺言

 

自筆証書遺言、秘密証書遺言

 

手続きの流れ

 

①遺言書を保管していた人または遺言書を発見した人が、遺言者(遺言書を書いた人=亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で申立て

 

②申し立てたその日に行われるのではなく、後日、指定された日(検認期日)に行われます。裁判所は相続人全員に遺言書の検認をすることを通知します。

 

③検認期日には相続人が全員出席する必要はありませんが、申し立てた人は出席

 

※遺言書の検認には1か月以上の期間がかかります。

 

手続き必要なもの

 

①遺言書(自筆証書遺言、秘密証書遺言)

 

②遺言書の検認の申立書(800円分の収入印紙を貼付)

 

③遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本

 

④相続人全員の戸籍謄本

 

➄連絡用の郵便切手

 

※このほか遺言者と相続人の関係によって、追加で戸籍謄本が必要な場合があります。

 

 

8. 遺言の種類別メリット、デメリット

 

普通方式の自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の一般的に言われているメリット、デメリットは下表となります。

 

 

 

9. 遺言執行者

 

 

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。

 

実際には、相続財産目録を作成したり、各金融機関での預金解約手続き、法務局での不動産名義変更手続きなど、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を持ちます。

 

遺言執行者は、必ず選任しなければいけないものではなく選任は任意です。

 

遺贈により不動産を取得した場合に不動産の所有権移転登記を行うためには、遺言執行者が選任していない場合、相続人と受遺者全員の署名、押印と印鑑証明が必要になります。

 

遺言執行者が選任している場合は、遺言執行者が単独で手続きを行うことができます。

 

上記の遺贈の場により不動産の所有権移転のように遺言執行者が選任されていないと、相続人全員と受遺者が協力しないと手続きが進められない手続きが多数あるため、選任することが望ましいです。

 

遺言執行者になれない人

 

① 未成年

 

② 破産者

 

遺言執行者の義務

 

①善管注意義務

「善管」とは善良な管理者の略で、善管注意義務とは、善良な管理者の注意義務のことです。
遺言執行者は、遺産を管理しますので、管理を怠って、遺産を減らしてしまったりすることがないように気を付けなければなりません。

 

善良な管理者の注意義務を怠ったがために損害が生じた場合は、遺言執行者は、相続人や受遺者に対して、その損害を賠償する義務を負います。

 

求められる注意義務の程度は、遺言執行者が専門家かどうかによります。

 

弁護士などの専門家の場合は、求められる注意義務の程度も高くなりますし、一般人の場合は、求められる注意義務の程度は専門家に比べて低くなります。

 

②目録作成義務

 

遺言の内容が財産に関する物の場合は、遺言執行者は財産目録を作成して、すべての相続人と包括受遺者に交付しなければなりません。

 

包括受遺者とは、受遺者の中でも、包括的な遺贈を受けた人、つまり、目的財産を特定せずに、遺産の全部または割合を指定して行う遺贈を受けた人のことです。

 

例えば、「遺産の3分の1を○○に遺贈する」というような指定の仕方です。

 

受遺者には、包括受遺者のほかに特定受遺者がありますが、特定受遺者とは目的財産を特定して遺贈を受けた人のことです。

 

例えば、「○○県○○市○○一丁目一番一号の土地を○○に遺贈する」というような指定の仕方です。

 

包括受遺者には財産目録を交付しなければなりませんが、特定受遺者には特定の財産の財産目録以外は、財産目録を交付する必要はありません。

 

財産目録は、相続財産の特定のために作成されますが、特定受遺者は、遺贈を受ける財産が決まっていて、ほかの財産をもらい受けることはないので、ほかにどのような財産があるかを把握する必要はないからです。

 

ですので、財産目録を交付するのは、相続人と包括受遺者だけでよいのです。

 

なお、遺留分をもたない相続人にも財産目録は交付しなければなりません。

 

また、財産目録には財産の評価額まで記載する必要はありません。

 

③報告義務

 

遺言執行者は、相続人や受遺者に求められた場合は、遺言執行の状況を報告しなければなりません。

 

また、遺言執行が終了した後は、遅滞なくその経過と結果を報告しなければなりません。

 

④受取物の引渡義務

 

遺言執行者は、遺言を執行するに当たって受け取った財産を相続人や受遺者に引き渡さなければなりません。

 

また、相続人や受遺者のために遺言執行者の名で取得した権利も移転しなければなりません。

 

➄補償義務

 

遺言執行者は、相続人や受遺者に引き渡すべき金額を自分のために使った場合は、その日以後の利息を支払わなければなりません。

 

また、その場合に、損害が生じてしまった場合は、その損害も賠償しなければなりません。

 

指定の方法

 

① 遺言で指定

 

② 相続発生後、家庭裁判所にて選任

 

相続発生後の遺言執行者の実務の流れ

 

① 承諾、就任をした旨を相続人全員に通知
就任通知書を作成し相続人に送付

 

② 相続人の確認

 

③ 相続財産の確認

 

④ 財産目録の作成、交付

 

➄ 遺言内容の執行

 

・ 法務局に対する登記申請手続き

 

・ 各金融機関に対する解約手続き

 

・ 株式等の名義変更手続き

 

・ 換価手続き

 

⑥ 相続人全員に完了の業務報告